池袋モンパルナス回遊美術館とは
池袋駅周辺地域の街なかをメインの会場としたアートフェスティバルです。
見どころは、若手芸術家の登竜門となっている、池袋の街とアーティストをつなぐ公募展「池袋アートギャザリング」、東京芸術劇場とWACCA池袋で開催される謎解きアートイベント「アート×探索 RANPO WANTED」、このほか東武百貨店、西武池袋本店、立教大学ほか西池袋や雑司が谷など池袋周辺の地元ギャラリーなどの約50会場で美術作品の企画展や講演会、ワークショップなどを開催しています。
主催:池袋モンパルナス回遊美術館 実行委員会
(NPO法人ゼファー池袋まちづくり・立教大学・東武百貨店・西武池袋本店・豊島区 ほか)
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池袋モンパルナス回遊美術館の始まり
「池袋モンパルナス」とは、池袋駅が開設された明治後半から大正、昭和初期にかけて、若者向けに安普請でもすぐできたアトリエ付き貸し住居群(通称「アトリエ村」)が立ち並び、そこに集住した情熱を持った若者たちが交流した頃のことを言います。創造意欲に溢れた若者たちのエネルギーに惹きつけられ、昭和十年代まで全国から盛んに人が集まる文化圏となっていきます。そして戦争があり、戦後はその姿を消しました。
こうした若い芸術家たちが切磋琢磨し友情を育んだ「池袋モンパルナス」の魅力を現代のまちづくりに活かそうと平成17年に区民有志で自主運営を開始した「アトリエ村資料室」を知った立教大学総長(当時)の押見輝男氏がこの公民連携による「回遊美術館」を発案しました。
折しもこの年、「文化創造都市宣言」を発表した豊島区(高野之夫区長・当時)とこれに呼応するように設立されたNPOゼファー池袋まちづくり(齊木勝好理事長・当時)、そして東武百貨店(根津公一社長・当時)に押見氏本人が声をかけ、地域連携によるまちづくりイベントがスタートしました。
街が育つ 街で育つ
押見氏は当初から『大学の一つの使命は地域貢献や地域連携にある。大学が持つ知的資源を街や地域に提供するという形だけでなく、大学も地域の一メンバーとして対等の立場で一緒に一つのものをつくりあげていきたい』との方針を示しました。『街のなかに美術作品を展示し街を回遊しながら鑑賞してもらい、池袋の街の雰囲気や文化を味わってもらおう。そのためには地域が主体となって連携し、若手の作家や子どもたちに多様性のある創作をどんどん発表してもらうイベントを継続しよう。街と人がともに成長する「街が育つ 街で育つ」を目指そう。』と呼びかけて公民連携による実行委員会を提唱したのです。
この「街が育つ 街で育つ」が、回遊美術館実行委員会の合言葉となりました。
街のどこもが美術館
平成18年(2006)3月に開催した第一回の会場は41ヵ所。立教大学・東武百貨店美術画廊・東京芸術劇場・自由学園明日館・創形美術学校・ホテルメトロポリタン・池袋西口商店街の店舗や街路灯フラッグ、ギャラリー店舗・区公共施設や鉄道会社の協力もいただきました。信金支店のショーウインド、池袋消防署ロビー等まさに街のどこもが展示会場となって現在も続いています。子どもたちの作品を募集展示する「まちかどこども美術展」もこの第一回から行っています。
若手作家の切磋琢磨の場に
第1回から第7回までは池袋モンパルナス時代の作家の回顧展に力を入れていましたが、第七回で東武百貨店美術部が紹介した画家・金丸悠児氏(当時33歳)作品展をきっかけに「若手アーティスト発表の場」というテーマに積極的に取り組むようになります。
金丸氏は当時、豊島区要町に拠点を構え、すでに人気作家でありながら若手のアーティスト集団「C-DEPOT」を率いて、仲間とともに創作発表のさまざまな機会を得ようとチャレンジしていました。
自身の作品展後も実行委員会に積極的に参加し「若手作家は日本中のアーティストと切磋琢磨し合いたいはず。ジャンルや年齢の異なるアーティストとの交流は刺激であり共振して自分に得られるものが多い。つながりが生まれた仲間の活躍は喜びになりいつか自分にも還ってくる。これはまさしく池袋モンパルナスの精神ではないだろうか」と問いかけました。
池袋アートギャザリング展
金丸氏の問いは第9回の池袋アートギャザリング(IAG)展で具体化します。そのコンセプトは、〝アツマル・ツナガル・ヒロガル〟。豊島区に由来のある若手作家の展覧会でした。
画家・野見山暁治氏はかつて自身が経験した池袋モンパルナス時代の雰囲気を「歯ぎしりのユートピア」という言葉で表現しました。芸術家同士が切磋琢磨し友情を育みながら自由な気持ちでいられる夢のような場所だったというのです。金丸氏が提唱する“アツマル・ツナガル・ヒロガル”はまさにこれと同義と言えるでしょう。
第9回以降、若手作家の参画によってライブアートやワークショップなど多彩な企画が登場します。
IAG AWARDS 公募展
第11回から「池袋アートギャザリング展」は、全国の新進気鋭作家の登竜門となるべく「IAG AWARDS公募展」に発展しました。審査員に金丸悠児氏をはじめとする現役活躍中の独立系アーティストが務めています。
IAG AWARDSの方針は〝池袋という街の「混沌」を魅力とする〟
そのため特定のスタイルやカテゴリー、国籍、年齢等の制限を設けず、街とアートを繋ぎ作家が成長するきっかけとしてIAG大賞や各パートナーズ賞には企業とのコラボやギャラリーでの個展開催などアーティストを継続的にバックアップしていく受賞特典を設けた実績が応募者から高く評価されています。
また、審査員が応募作家に審査経緯を含めた丁寧な講評を行うことでも好評を得ていて今は毎年300超の応募から50作家を選定する盛況な公募展になりました。
2026年度はこのIAG AWARDS公募展が10回目を迎えます。
また、第17回から始まった「アーティストデビュー展」は中学生・高校生を対象にした公募展で、ここからIAGへの参加につながる未来の作家の登竜門にもなっています。
今後もアーティストデビュー展をきっかけに活躍するような芸術を愛する子どもたちを応援することも回遊美術館の目標となっています。
自由な創造ができる喜び 良き出会いができる喜び
20年を経た池袋モンパルナス回遊美術館のまちづくりとは何だったろうか、と考えてみると、私たち実行委員会がこのアートイベントを通じてこれまでうれしく感じてきたことにその答えがあるように思います。
それは何より、若者が、〝自由な創造を模索しそれができる喜びを発表の場で見せてくれたとき〟、〝今より前進するきっかけになるような人や事象との良き出会いができた喜びを見せてくれたとき〟にほかなりません。
自由な創造ができる喜び、良き出会いができる喜び、それが人生で感じられた場所であるからこそ人々が愛し続ける「まち」になるのでしょう。このことを回遊美術館のまちづくりの主題にし続けたいと思っています。
今後とも池袋モンパルナス回遊美術館をよろしくお願いいたします。
(実行委員長 小林俊史)